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    特別休暇とは?有給・無給の違いと、採用・定着につなげる制度設計のポイント

    就業規則

    今回は「特別休暇」についてです。

     

    Questions:
    福利厚生を充実させて採用力や定着率を高めるため、「特別休暇」の導入を検討しています。
    特別休暇とは具体的にどのようなもので、導入するメリットやデメリットは何でしょうか。
    また、一般的な日数や、就業規則に規定する際に会社として気を付けるべき実務上のポイントを教えてください。

     

    Answer:
    特別休暇は、会社が独自に設ける休暇制度です。
    慶弔休暇やリフレッシュ休暇など、目的に応じて日数や取得条件を設計できます。
    ただし、導入後は従業員の労働条件になるため、有給・無給の別、対象者、取得期限、申請手続きまで明確にしておくことが大切です。

     

    この記事のポイント:

    ・特別休暇は会社独自の制度ですが、導入後の運用や変更を会社が自由に決められるわけではありません。
    ・日数だけでなく、有給・無給、休日の数え方、取得期限をセットで決めます。
    ・パート・有期雇用社員への適用は、雇用形態だけで区別せず、休暇の目的と勤務実態を踏まえて検討します。
    ・採用・定着につなげるには、制度を設けるだけでなく、実際に取得できる体制と分かりやすい周知が必要です。

     

    人材確保や従業員の定着が企業の重要課題となる中、福利厚生の充実に向けて「特別休暇」の導入を検討する企業もあるでしょう。

    しかし、特別休暇は自由度が高い反面、ルールが曖昧なまま運用を始めると、従業員間の不公平感や労務トラブルの原因にもなります。

    本コラムでは、特別休暇の基本から、メリット・デメリット、日数を決める際の考え方、就業規則に規定する際の実務ポイントまで解説します。

     

    改めて、「特別休暇」とは?

    特別休暇とは、年次有給休暇などの法律に基づく休暇とは別に、会社が福利厚生の一環として独自に設ける休暇です。

    代表的なものとして、結婚休暇や忌引き休暇などの「慶弔休暇」、夏季休暇、リフレッシュ休暇、バースデー休暇、ボランティア休暇などが挙げられます。

    結婚や葬儀への対応を支える制度もあれば、長期勤続への報償や心身のリフレッシュを目的とする制度もあります。まずは「何のための休暇か」を決めることが、対象者や取得条件を設計する出発点です。

    導入は任意でも、導入後は労働条件になる

    会社独自の特別休暇は、法律上、必ず設けなければならないものではありません。しかし、制度として導入すれば、従業員の労働条件になります。
    労働基準法89条では、「休暇」は就業規則に記載すべき事項とされています。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、特別休暇の内容を就業規則に反映し、変更の届出を行う必要があります。

    10人未満で就業規則の作成・届出義務がない場合でも、対象者や取得条件を書面で明確にし、従業員に共有しておくことが、認識の違いを防ぐうえで役立ちます。

    年次有給休暇とは別に管理する

    特別休暇を有給にしても、法律上の年次有給休暇と同じ制度になるわけではありません。
    例えば、有給の慶弔休暇や夏季休暇を取得した日数は、年次有給休暇の「年5日の取得義務」に算入できません。
    年次有給休暇と特別休暇は、勤怠管理上も区別する必要があります。

    また、夏季の休みを会社独自の特別休暇にするのか、所定休日にするのか、年次有給休暇の計画的付与で対応するのかによって、必要なルールや手続きが異なります。
    「夏休み」という名称だけで判断せず、制度上の位置付けを整理しましょう。

     

    特別休暇を用意するメリットとデメリット

    メリット:採用力強化と従業員の定着を支える

    特別休暇を設けることで、従業員に対する報償や生活上の支援となり、働きやすい環境を整備できます。
    結婚や家族の葬儀などに対応する休暇は、従業員が必要なときに仕事を休める安心につながります。
    リフレッシュ休暇であれば、継続して働いてきたことを会社が評価する制度として位置付けられます。
    こうした制度は、従業員のモチベーションや帰属意識を支え、長期的な定着につながることが期待できます。
    採用活動においても、自社の働きやすさを伝える材料になります。

    ただし、「特別休暇あり」という表示だけでは、求職者に具体的な魅力が伝わりません。休暇の種類、日数、有給・無給、取得条件などを示すことで、入社後の働き方をイメージしやすくなります。

     

    デメリット:ルールの曖昧さによるトラブルと運用負担

    会社独自の制度として設計できる反面、運用ルールが曖昧だとトラブルの元になります。

    例えば、
    「入籍日と挙式日が離れている場合、いつ結婚休暇を取れるのか」
    「入社前の出来事にも適用されるのか」
    といった条件が不明確だと、担当者ごとに判断が変わり、不公平感や会社への不満を生む原因になります。

     

    また、有給扱いにすれば、働いていない期間についても賃金を支払う負担が生じます。
    休暇取得中の業務を補うため、代替要員や残業が必要になる場合もあります。
    制度を設ける際は、日数や費用だけでなく、誰が業務を引き継ぐか、申請を誰が確認するかまで考えておきましょう。

     

    特別休暇の平均的な日数は?どう決める?

    制度設計を考えるための例として

    特別休暇の中でも代表的な「慶弔休暇」の日数は会社が自由に設定できますが、一般的には故人との関係性(親等)に応じて設定されることが多く、以下の日数が標準的な目安とされています。

     

    •配偶者が死亡したとき: 7日〜10日程度
    •1親等(父母・子)が死亡したとき: 5日〜7日程度
    •2親等(祖父母・兄弟姉妹・孫・配偶者の父母)が死亡したとき: 2日〜5日程度
    •3親等(おじ・おば等)が死亡したとき: 1日〜2日程度
    •本人が結婚したとき: 5日程度
    •配偶者が出産したとき: 2日程度

     

    これは全国平均や推奨基準ではなく、制度設計を考えるための例です。
    実際の日数は、休暇の目的、自社の勤務体制、休日の数え方などを踏まえて決めます。

     

    親等を基準にする場合は、血族と姻族の区別にも注意が必要です。配偶者の父母は1親等の姻族に当たります。規程では親等だけで表すより、「本人の父母」「配偶者の父母」など、対象となる続柄を具体的に列挙すると分かりやすくなります。

     

    休暇日数の数え方にも注意

    同じ「5日」でも、所定休日を含めて数えるか、勤務予定のある日だけを数えるかによって、実際に休める期間は異なります。
    日数を決める際は、休日の扱いも併せて整理しておくとよいでしょう。

     

    特別休暇を導入・運用する際の実務ポイント

    ① パート・アルバイト等への適用を確認する

    「特別休暇は正社員だけ」というルールは、その理由を慎重に検討する必要があります。
    同一労働同一賃金の考え方では、正社員とパート・有期雇用社員との間で、不合理な待遇差を設けることは禁止されています。
    ※2026年10月1日には、関連するガイドライン等が改正されました。

     

    現行のガイドラインでは、慶弔休暇について、短時間・有期雇用労働者にも通常の労働者と同一の休暇を付与することが示されています。
    一方、週の勤務日数が少ない場合の勤務日の振替や、リフレッシュ休暇の目的に応じた取扱いについても具体例があります。
    そのため、すべての特別休暇を一括して扱うのではなく、休暇ごとに目的と勤務実態を確認することが大切です。
    「パートだから対象外」とするのではなく、その取扱いを制度の目的に沿って説明できるか、という視点で点検しましょう。

    ② 有給か無給か、賃金の扱いまで明記する

    会社独自の特別休暇を「有給」とするか「無給」とするかは、制度設計の重要な項目です。
    厚生労働省の病気休暇の規定例でも、「通常の賃金を支払う場合」と「無給」とする場合が示されています。
    ただし、有給・無給の別も、不合理な待遇差を設けてよいという意味ではありません。

    また、既存の契約や規程で有給とされている休暇を、会社の判断だけで無給に変更できるわけでもありません。
    有給とする場合は、支払う賃金の計算方法を明確にします。
    無給とする場合は、月給からの控除方法も確認しておきましょう。
    勤怠システム上の区分と給与計算の設定をそろえておくことも、運用上のミスを防ぐポイントです。

    ③ 休日の扱いと取得期限を明確にする

    休暇期間中に土日や祝日などの所定休日を挟む場合、その休日を休暇日数に含むのか、除外するのかを明確にします。

    併せて、次の条件も整理しましょう。

     

    ・休暇をいつから取得できるか
    ・連続して取得するか、分割取得を認めるか
    ・いつまでに取得する必要があるか
    ・取得しなかった日数を繰り越せるか

     

    結婚休暇の場合は、入籍日と挙式日が離れることもあります。
    「いずれか早い日から○か月以内」とすれば管理はしやすい一方、挙式に合わせて取得したい従業員が利用できなくなる場合もあります。

    どの場面を支援したい制度なのかを踏まえ、取得期限の起算日を決めましょう。
    入社前の出来事への適用や、同じ結婚について二重に付与しない取扱いも明確にしておくと、個別判断を減らせます。

    ④ 申請手続きと確認書類を適切に定める

    原則として事前申請とし、突発的な忌引き等の場合は、まず速やかに連絡し、その後に申請できる手続きを設けます。
    事実確認のために書類を求める場合も、休暇の対象となる出来事や続柄を確認するのに必要な範囲にとどめましょう。
    死亡診断書には、休暇の判断に通常必要のない死因等の情報が含まれるため、一律の提出を求める運用は避けたいところです。
    葬儀の案内状、会葬礼状、葬儀社の証明書など、準備できる資料で確認する方法が考えられます。
    ただし、家族葬などでは書類を用意できない場合もあります。
    特定の書類だけを必須にせず、代替資料や申告による確認方法も決めておくと、制度の目的に沿った運用ができます。

    ⑤ 導入後の縮小・廃止は慎重に行う

    特別休暇は任意に導入する制度ですが、導入後に日数を減らす、有給から無給にする、対象者を狭めるといった変更は、労働条件の不利益変更に当たる可能性があります。
    労働契約法9条・10条では、就業規則による不利益変更について、合意や変更の合理性等に関するルールが定められています。
    会社独自の制度だからという理由だけで、自由に変更できるものではありません。

    導入時には、継続できる日数や費用負担かを確認しておきましょう。
    既存制度を見直す場合は、現在の規程と運用実態を整理したうえで、変更内容と必要な手続きを検討します。

     

    まとめ

    特別休暇は、従業員のエンゲージメントを高め、企業の魅力を向上させる極めて有効な福利厚生制度です。
    しかし、「従業員のため」という善意だけで曖昧にスタートすると、後々の不公平感や運用上のトラブルにつながることがあります。
    制度を導入・見直す際は、有給・無給の別、対象者、休日の扱い、取得期限、申請手続きを明確にしましょう。
    パート・有期雇用社員への適用や、年次有給休暇との区別も確認が必要です。
    大切なのは、日数の多い制度を作ることだけではありません。自社が何を支援したいのかを明確にし、従業員が必要なときに利用でき、会社も継続して運用できる制度にすることです。

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