勤務中に私的なネットサーフィンをしている、担当業務が進んでいない、何度か口頭で注意しても「やっています」と返され、一向に改善されない。
こうした勤務態度の問題に、会社としてどう対応すればよいのでしょうか。
この記事のポイント:
・「真面目に働け」という抽象的な注意ではなく、問題となる行動と改善すべき内容を具体的に伝えます。
・日報は業務の進捗や支障を把握するために使い、会社が行った指導や支援も記録します。
・適正な業務指導はパワハラに該当しませんが、人格否定や過剰な要求は避ける必要があります。
・改善が見られない場合も、就業規則や問題行動の程度を確認し、懲戒処分や解雇を慎重に検討します。
仕事をさぼる、指示された業務に取り組まないといった従業員への対応は、企業にとって悩ましい問題です。
「何度言っても直らないから辞めさせたい」と考えることもあるでしょう。
しかし、問題となる事実や指導の内容を十分に整理しないまま、解雇や退職を求める対応へ進むと、労務トラブルに発展するおそれがあります。
勤務態度に問題がある社員への改善指導は、問題となる事実を確認し、会社が求める業務内容と水準を具体的に伝えることから始めます。
日報・面談・書面指導を組み合わせ、本人の説明や改善状況も記録しましょう。
指導を重ねたことだけで、懲戒処分や解雇が正当化されるわけではありません。
本コラムでは、なぜ改善指導が必要なのか、具体的にどのように指導し、記録を残すべきかについて、実務的な視点から解説します。
この記事の目次
勤務態度に問題がある従業員に対して、会社が改善指導を行う第一の目的は、問題となる行動を改め、求められる業務を適切に遂行してもらうことです。
「会社が何を問題と考えているか」「どのような状態になれば改善したと判断するか」が伝わっていなければ、注意を繰り返しても、会社と本人の認識はかみ合いません。
改善指導は、その認識をそろえるためのプロセスです。また、指導の内容や本人の説明、改善状況を記録することは、その後の対応を判断するための材料にもなります。
労働契約法16条では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効とされています。
勤務態度に問題があったというだけで、直ちに解雇が認められるわけではありません。
会社が何を確認し、どのような改善を求め、それに対して本人がどう対応したのか。これらを整理しておくことが、感情的な判断を避けるうえでも役立ちます。
ただし、記録を残せば必ず解雇できる、一定回数の指導をすれば十分、ということではありません。
指導の内容や改善のために設けた期間が適切だったかも含め、個別に検討する必要があります。
改善指導を始める前に、まず「何が起きているのか」を確認しましょう。
ネットサーフィンをしているように見えても、業務に必要な情報を調べている可能性があります。また、仕事が進んでいない場合も、指示の内容が曖昧だったり、本人だけでは解決できない支障が生じていたりすることがあります。
会社側の見立てを伝えるとともに、本人の説明を聞き、業務上の問題を整理します。
確認したいのは、次のような点です。
・いつ、どのような行動があったか
・担当業務や期限に、どのような影響が出ているか
・どのような業務指示を出していたか
・本人は、その状況をどう説明しているか
・業務を進めるうえで、会社側が解消すべき支障はないか
「やる気がない」という印象と、「期限までに提出するよう指示した業務が、説明なく未完了になっている」という事実では、指導の伝わり方が異なります。
本人の説明を聞いたうえで問題行動が確認できた場合は、曖昧にせず、会社として改善を求める内容を伝えます。
現場の管理職だけに任せるのではなく、指導担当者を明確に決め、会社として組織的に取り組む体制を作ることも重要です。
複数の上司が、それぞれ違う指示や評価を伝えると、本人は何を基準に働けばよいか分からなくなります。
求める業務水準や確認方法をそろえ、指導担当者が孤立しないよう、人事部や経営陣がバックアップしましょう。
「やる気を出せ」「真面目に働け」という抽象的な指導では、何を改善すればよいか本人は分かりません。
まずは、会社がその従業員にどのような業務を、どの程度の水準で求めているのかを明確に提示することが出発点です。
担当する業務、期限、報告のタイミング、必要な品質など、本人が行動に移せる内容にします。私的なサイト閲覧が問題であれば、勤務中の利用ルールや業務への支障も具体的に伝えます。
このとき、本人に求める改善と、会社が行う支援を一緒に整理すると、指導を実行に移しやすくなります。業務手順の説明や優先順位の確認など、会社側の対応が必要な場合は、担当者も決めておきましょう。
業務の実態や進捗を把握する方法の一つが、「業務日報」の活用です。
いつ、どのような業務を行い、どこまで進んだのかを具体的に記載してもらいます。必要に応じて、関係者や成果物も確認できる形にします。
ただし、細かく書かせること自体が目的ではありません。
担当業務に応じて、次のような情報が分かる内容にするとよいでしょう。
・その日に取り組んだ業務
・進捗と成果
・未完了の業務と、その理由
・次に取り組む予定
・上司の判断や支援が必要な事項
提出された日報に対し、指導担当者がコメントを返し、記載が曖昧な場合は補足を求めます。毎日の確認が必要な状況であれば、日々のフィードバックを行う方法もあります。
日報の記載だけで実態を判断せず、成果物や業務の進捗と照らし合わせることも欠かせません。
また、報告に過大な時間がかかり、本来の業務を妨げるようでは逆効果です。指導に必要な情報を把握できる範囲で、項目や分量を設定しましょう。
日報による日々の確認に加え、定期的な業務面談を実施します。例えば2週間に1回程度を目安にしつつ、業務の性質や問題の程度に応じて頻度を調整します。
これまでの業務日報や成果物をもとに、「改善されている点」「まだ改善されていない問題点」を具体的にフィードバックします。
問題点だけを伝えるのではなく、改善があった部分も確認しましょう。本人が何を変えれば評価されるのかを理解できることが、次の行動につながります。
面談では、本人の説明を聞き、未達成の理由や追加の支援が必要かも確認します。そのうえで、次回までに取り組む事項と、改善状況を確認する時期を決めます。
面談の内容は、その場だけで終わらせず、記録に残しておきましょう。
指導を繰り返しても改善が見られない場合は、口頭だけでなく、「業務改善指導書」などの書面を交付することを検討します。
これにより、いつ、どのような問題について注意を受け、何を改善するよう求められたかが明確になります。
書面には、具体的な問題点と改善すべき事項に加え、次の内容を整理します。
・これまでの指導経過
・本人に求める行動や業務水準
・改善状況を確認する時期
・会社が行う支援
・改善が見られない場合に検討する対応
改善されない場合の対応を伝える際も、直ちに解雇が決まっているかのような書き方は避けます。
就業規則や問題行動の程度に応じて、懲戒処分を含む対応を検討する可能性があることを、具体的かつ冷静に説明しましょう。
指導書を交付した後も、改善状況の確認は続けます。書面を渡して終わりにせず、その後の本人の対応まで記録することが必要です。
業務命令違反や度重なる職務懈怠が続く場合は、就業規則に基づき、戒告や譴責などの懲戒処分を検討することがあります。
ただし、本人に事態の深刻さを認識させたい、という理由だけで処分を決めることはできません。
就業規則上の根拠、問題となる行為の内容と程度、本人の説明、これまでの対応などを確認します。
労働契約法15条では、合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない懲戒は無効とされています。
処分の重さが問題行動に見合っているかも、慎重に検討する必要があります。
また、懲戒処分、退職勧奨、解雇は、それぞれ異なる対応です。「指導しても改善しなかった」という理由だけで、一律に次の手段へ進めるものではありません。
対応を切り替える前に、指導の経過と就業規則、雇用契約の内容を整理しておきましょう。
「厳しく指導するとパワハラと言われるのでは」と、注意をためらうこともあるかもしれません。
厚生労働省の指針では、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワーハラスメントに該当しないとされています。
必要な指導を控えるのではなく、目的・内容・方法が適切かを確認することが大切です。
指導では、「どの行動が問題で、どう改善してほしいか」を伝えます。「人として駄目だ」「給料泥棒だ」といった人格を否定する言葉は、業務の改善につながりません。
日報や面談についても、業務上の必要性を説明できる運用にします。
些細な記載の違いについて何度も再提出を求めたり、大勢の前で長時間叱責したりすると、指導の方法自体が問題になるおそれがあります。
改善指導を、本人を退職に追い込むための手段として運用しないことも重要です。
必要な業務を与え、改善を確認できる機会を設けたうえで、会社として求める水準を伝えましょう。
日報や指導書があっても、本人の問題行動だけを記録していては、指導の全体像が分かりません。
会社がどのような説明をし、本人がどう答え、必要な支援を行ったかも含めて残します。
指導記録は、次の順序で整理すると経過を確認しやすくなります。
・確認した事実と業務への影響
・本人の説明
・会社が伝えた改善事項
・会社が行った支援
・改善状況を確認した結果
・次に行う対応
「態度が悪かった」「反省していない」といった評価だけでなく、実際の発言や行動、業務の結果を記載します。
改善が見られた場合も、同じように記録しましょう。
記録の目的は、会社に都合のよい証拠を集めることではありません。
経過を正確に残し、本人の改善状況と会社の対応を振り返れるようにすることです。
勤務態度に問題がある従業員への改善指導は、一朝一夕に効果が出るものではありません。
指導を始めてもすぐには行動が変わらず、「本当にこの方法でよいのだろうか」と焦ることもあるでしょう。
そのようなときこそ、会社が求める業務内容と水準を明確にし、日報や定期面談を通じて、改善状況を具体的に確認することが大切です。
問題を放置すれば、周囲の従業員への負担や職場の不公平感につながるおそれがあります。
一方、会社側の印象だけで対応を進めることも避けなければなりません。
問題となる事実を確認し、本人の説明を聞き、必要な指導と支援を行う。その経過を記録し、改善が見られない場合は、次の対応を慎重に判断しましょう。
「何度注意しても改善しない」
「日報や面談を始めたいが、どこまで求めてよいか分からない」
「指導書を出す前に内容を確認したい」
といったお悩みはありませんか?
アーチスでは、勤務態度に問題がある社員への改善指導や、指導書の作成、就業規則に沿った対応についてご相談いただけます。
懲戒処分や退職勧奨などを検討する前に、これまでの指導内容と記録を整理し、会社としてどのように対応すべきか、一度ご相談ください。
プロフィール

神奈川県平塚市
Crux社会保険労務士法人・行政書士法人
アーチス
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