「給料計算は、専用ソフトがあれば誰でも簡単にできるものでしょうか?」
社労士事務所としてご依頼いただく給与計算。その中でこのようなご質問をいただくことがあります。
もちろん社労士事務所に必ず委託しなければならないものではありませんが、実は給料計算という業務は非常に複雑であり、簡単ではありません。また、とても重要度が高い業務です。
ここでは簡単そうに見えて実は奥が深い、給料計算の重要さや難しさ、基礎知識について解説していきます。
この記事の目次
従業員と雇用主の間の信頼に、正確で期日通りの給料の支払いが挙げられます。
従業員は自分の労働に対する報酬が確実に受け取れることを期待しているのが当然で、確実に実行されるかどうかが職場の満足度に直結します。
適切な報酬は従業員のモチベーションを高める重要な要素です。
給与の遅延や誤りは、逆に従業員の士気を低下させ、生産性に悪影響を及ぼす可能性があります。
そういった企業・職場は、人をなかなか採用するのが難しい状況となります。
このことで大事な人材を失ってしまうのはもったいないですね。
給料計算は非常に複雑です。というのも、労働基準法、最低賃金法、所得税法、地方税法などなど、多くの法律でそのルールが厳密に決まっているからです。
仮にそのルールを知らない、守れていないという場合、そのまま給料計算を続けてしまうと大きなリスクを背負うことになります。
例として、大手弁護士事務所による、未払い残業代の請求を労働者に促すものがあります。
当社のお客様でも、一人の労働に350万円もの請求があり、その額を払わなくてはならない事象がありました。
会社を守るためにも、ルールを守るコンプライアンスは必須となります。
詳細は次回解説します。
給料は多くの企業にとって最大の経費の一つです。給料計算データは、労働コストを適切に管理し、予算計画を作成するためにも必要です。そのために適切なソフトを導入し、過去のデータの分析、未来の把握、昇給などの参考にするために使いこなし行く必要があります。
ソフトの詳細は次回解説します。
次に給与計算の基礎知識を見ていきましょう。
給与計算はおおまかに
1.集計
2.計算
3.控除
の3つの構成となっています。
詳細を以下にご説明いたします。
集計は大きく2つに分けることができます。
①勤怠時間や日数等の集計
②その他(歩合やインセンティブ)等の集計
月の総労働時間を細分化すると大まかに以下の項目に分けられます。
所定労働時間数
(※会社と労働者が約束している時間)
所定外労働時間数
(※所定労働時間を超えているが、法定労働時間に達していない時間、割増は不要)
法定労働時間数
(※1日8時間、週40時間を超えた時間、割増は125%必要)
法定休日時間数
(※週に1日も休みがない場合又は4週間の間に4日以上の休みがなく労働した時間、割増は135%必要)
深夜労働時間
(※22時から朝5時までに勤務した時間、割増は25%必要)
出勤日数
有給休暇取得日数
このように、集計だけでも労働基準法のしっかりとした知識が必要となります。
また変形労働時間制を採用していれば、さらに複雑な業務となります。
集計を間違えた方法で行っていると、未払い残業を増大させてしまう可能性があり、大変危険です。
歩合、インセンティブ、回数による手当支給、交通費などがあります。
1.で集計した時間数等を使用して、支給すべき金額を決定していきます。
割増率をしっかり把握し、不足がないようにすることはもちろん、「支給し過ぎる」ことも注意しましょう。
間違えやすい事例は下記の通りです。
・1日8時間を超えているのに割増をしていない
・週40時間を超えているのに割増をしていない
・所定外労働時間に125%の割増をしてしまう(法律上は100%で良い)
・土曜日の出勤に135%の割増をしてしまう(日曜日など同じ週に休日があれば、125%で良い)
・夜勤専門の方の深夜割増を125%にしてしまう
・残業単価の計算方法が誤っている(手当を基礎の計算に入れていない、割っている時間数が誤っている)
2.の計算の後に、控除を行います。
具体的には、社会保険料、雇用保険料、所得税、住民税の控除です。
社会保険料は、年金事務所から届いた標準報酬決定通知書を基に社会保険に加入している個人ごとに徴収金額を決定していきます。
40歳からは介護保険料の徴収も開始されますので、注意が必要です。
そして社会保険料の徴収でもう一つ注意しなくてはならないのは、随時改定です。
固定的賃金が変更になり、標準報酬決定通知書にある等級から変動が生じた場合、変更届及び給料計算での保険料を変更する必要があります。
専門家としては、実はこの手続きが漏れている会社が多いと感じています。
もし漏れが会った場合は、年金事務所の調査の際など必ず調査対象になります。
また、変更ができていないと、遡って変更をする必要があります。
そうなると労働者から不足分を徴収する必要が生じるなど、不測の事態が生じます。
雇用保険料
→毎年4月に改正されますので、忘れずに変更が必要です。
所得税
→毎月の支給額に応じた金額の徴収が必要です。
住民税
→市役所から届く特別徴収に関する資料に応じて徴収が必要です。
いかがでしたでしょうか?
1.集計2.計算3.控除それぞれ、労基法など多くの知識が必要になります。
そして正直、私たちアーチスが今までに拝見してきたお客様の9割近くは、法律に則った給料計算ができていません。
それだけ専門性が高く、ミスが生じたときのリスクも大きい業務なのです。
「たかが給料計算」と侮って足元をすくわれる前に、可能であれば顧問の社労士や税理士さんにサポートをいただき、確実に実行できる環境を整えてください。
揺るがない経営基盤の一環となるはずです。
もしお近くに信頼できる社労士事務所がない場合は、当社アーチスへぜひご相談ください。
全国各地、オンラインでも対応可能な体制を整えております。
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