「障害者雇用率」という数値をご存知でしょうか?
一般企業や国・地方公共団体は、一定の割合で障害者を雇用しなければならないと定められていて、その制度が障害者雇用率制度です。
障害者雇用率制度は、各企業に義務づけられているものになりますが、実際はどのような制度なのか詳細をご存知ない経営者様も多いのではないでしょうか。
今回は、障害者雇用率制度の概要や具体的な雇用率の数値、会社で雇わなければならない障害者数の求め方について分かりやすく解説をしていきます。
ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
一般企業や国・地方公共団体は、厚生労働省が定める一定の割合で障害者を雇用しなければなりません。
これを「障害者雇用率制度」といいます。そして、この一定の割合のことを「障害者雇用率」または「法定雇用率」と呼びます。
日本では、障害の有無にかかわらず、すべての国民が差別されることなく、雇用機会を得る社会づくりが求められています。
しかしながら、健常者と比較すると、どうしても障害者の場合は雇用されづらいケースがみられるのが現状です。
このような状況に対応するため、国は会社で働く社員の人数に応じて一定の割合で障害者を雇用することを義務づけることとなり、「障害者雇用制度」が確立されたという背景があります。
2023年3月現在において、一般企業に求められる法定雇用率(障害者雇用率)は2.3%になります。
具体的にいえば、社員が43.5人以上いる会社の場合、1人以上の障害者を雇用しなければならない、というイメージです。
参考までに、
国・地方公共団体の場合は2.6%
特殊法人等の場合は2.6%
都道府県における教育委員会の場合は2.5%
となり、さまざまな企業団体に一定数の障害者雇用が求められていることが分かります。
なお、本年度にこの法定雇用率に関する法改正が行われ、一般企業の雇用率が2.7%に引き上げられることになりました。
ただし、急激な雇用率の変更によって会社側の準備が間に合わない可能性を踏まえ、雇用率が段階的に引き上げられる運びとなりました。
具体的な数値は、2023年度は2.3%で据え置きに、その翌年となる2024年度に2.5%、2026年度に2.7%へと変更されます。また、国・地方公共団体・特殊法人等は3.0%、教育委員会は2.9%へ、一般企業の雇用率と同様に段階的な引き上げが行われることになります。
それでは、実際に自社で障害者を何人雇用しなければならないのかを計算してみましょう。
例えば、常時雇用の社員数が150人いる一般企業の場合、150人×2.3%=3.45になります。
小数点以下の数値は切り捨てとなりますので、この会社の場合は「3人」の障害者を雇用しなければならないことになります。
障害者雇用率制度の対象となる障害者は、原則として身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を所有する者が該当します。
フルタイムの場合は1人としてカウント、働く時間が短い短時間雇用者は0.5人としてカウントする点に注意が必要です。障害者の程度や雇用状況に応じて、以下の表に応じてカウントをしなければなりません。
なお、精神障害者が短時間雇用をされる場合、以下の①②の両方を満たす場合は、1人=1人カウントとみなす点に注意が必要です。
①新たに雇用されてから3年以内の者、または精神障害者保健福祉手帳を取得してから3年以内の者
②2023年3月31日までに雇用され、精神障害者保健福祉手帳を取得した者
ここで一つ例を挙げてみましょう。
常時雇用の正社員が100人、短時間雇用者が50人いる会社で、重度の身体障害者・重度の知的障害者の2名を短時間雇用、身体障害者・知的障害者の2名をフルタイム雇用、精神障害者1名を短時間雇用している場合は、次のような形で障害者雇用率を算出します。
「重度の身体障害者1カウント+重度の知的障害者1人カウント+身体障害者1カウント+精神障害者1カウント+精神障害者者0.5人カウント」÷「常時雇用の正社員100人+(短時間雇用者50人×0.5)」×100=3.6%
したがって、この会社の障害者雇用率は3.6%となり、法定雇用率である2.3%をクリアしていることになります。
前述の通り、会社には一定数の障害者雇用を行うよう義務づけられているわけですが、中には障害者を就労させることが一般的な観点から難しい業種の企業も少なからずみられます。
このようなケースに応じて、国では「除外率制度」を設けています。
これにより、雇用労働者数を算出する際に、除外率相当の労働者数を控除することが認められることになります。
除外率制度は、平成14年に実施された障害者雇用促進法の改正により廃止する見込みとなりましたが、特例措置として制度が残されています。
ただし、廃止に向けて少しずつ引き下げが行われている段階となるため、現在の除外率については常に国の動向をチェックしておく必要があるでしょう。
障害者雇用率制度についてお分かりいただけましたでしょうか。
雇用率の計算やカウント方法は障害者の状況に応じて異なるため、難しく、専門性の高い部分です。
自社で何人の障害者を雇用しなければならないのか、カウントはどのように行うのかなど、アーチスでは皆様のご相談に親身にお応えいたします。
ぜひお気軽に当社までご相談ください。
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社会保険労務士法人・行政書士法人
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