第1弾の記事では、同一労働同一賃金の基礎となる内容について解説をしてきました。
今回は第2弾です。
2020年4月にパートタイム・有期雇用労働法が施行されて3年が経過しました。(2023年現在)
さらにこれから「同一労働同一賃金」に関する指導が強化されることを受け、労働局と労働基準監督署が連携するという話が伝わってきています。
また、これまでは大企業のみが対象でしたが、今後は中小企業も他人事ではありません。
今回は、アーチスが順を追って同一労働同一賃金に関する指導強化の内容を解説していきます。
会社経営者や担当部署の方々のご参考になれば幸いです。
この記事の目次
まずは、各企業が守るべき同一労働同一賃金の内容やルールについておさらいをしていきましょう。
同一労働同一賃金とは、正社員やパート・アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、差別のない公平な待遇を確保しなければならないという考え方のことです。
ただし、仕事内容が同じならば給料は全く同じでなければならない、ということではありません。それぞれの働き方に応じて雇用条件の待遇を均衡・均等にする必要があるということです。
具体的な内容は、主に以下の2種類となります。
①不合理な待遇禁止
正社員とパートタイム・有期雇用労働者の待遇に関する項目です。
職務の内容や配置転換の変更範囲などから、待遇についてはその性質や目的に沿って適切とされる内容を考慮して設定をしなければなりません。
つまり、正社員とパートタイム・有期雇用労働者の間で不合理とされる相違を設けてはいけないということです。
②差別的取り扱いの禁止
職務の内容や配置転換の変更範囲が“正社員と同等となる”パートタイム・有期雇用労働者は、その雇用形態を理由として待遇に差別をしてはいけません。
上記2種類で述べられている“待遇”については、以下の内容が挙げられます。
■基本給
正社員と同等の能力や経験があるパートタイム・有期雇用労働者に関しては、正社員と同水準の基本給を支払う必要があります。
昇給についても、正社員と同等の能力を持つパートタイム・有期雇用労働者については同じ待遇を確保しなければなりません。
■賞与(ボーナス)
会社の売上への貢献度から算出される賞与の場合は、正社員と同等の貢献をしたパートタイム・有期雇用労働者へは、正社員と同水準の賞与を支払う必要があります。
■各種手当
役職手当や技術手当などの各種手当については、正社員と同じ役職に就くパートタイム・有期雇用労働者については同水準の手当を支給する必要があります。
異なる役職に就く場合については、相違点に基づいた金額を算出しなければなりません。
なお、危険な仕事を行ったことに対する作業手当などについては、雇用形態にかかわらず同水準の手当を支払う必要があります。
■福利厚生・職業訓練
食堂の利用や制服の支給などの福利厚生制度は、雇用形態にかかわらず同等に利用させることが求められます。
慶弔休暇などの休暇や休職制度も同様に、雇用形態を問わない対応が必要になります。
また、職務遂行に応じた職業訓練についても、同等の職務内容である場合は雇用形態にかかわらず実施をしなければなりません。
会社側は、パートタイム・有期雇用労働者を雇用した際に労働者から求められた場合は、以下の内容について説明をしなければなりません。
■不合理な待遇の禁止について
■正社員と同等となるパートタイム・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止について
■賃金について
■教育訓練について
■福利厚生施設について
■正社員への転換制度について
【注意】
なお、説明を要求されたことを理由として、このパートタイム・有期雇用労働者に対する不利益な取り扱いや言動をすることは禁止されています。
また会社側は、雇い入れ後もパートタイム・有期雇用労働者より正社員との間に存在する待遇差の内容や理由、待遇決定に関する考慮事項の説明をしなければなりません。
■正社員との間の待遇の相違内容やその理由について
■労働条件に関する文書の交付等について
■就業規則の作成手続について
■不合理な待遇の禁止について
■正社員と同等となるパートタイム・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止について
■賃金について
■教育訓練について
■福利厚生施設について
■正社員への転換制度について
これまでの項目でご説明した、同一労働同一賃金。定められた内容についてさらに企業へ徹底遵守してもらうため、都道府県労働局と労働基準監督署がタッグを組んで指導へ乗り出すことになりました。
具体的には、労働基準監督署の監督官が企業へ訪問をし、調査を実施する際にあわせて同一労働同一賃金の状況について確認をします。その上で確認内容を都道府県労働局へ提供し、労働局が助言指導を行うという運びとなります。
同一労働同一賃金に関するルールは、2021年4月に中小企業を含めたすべての企業に向けて施行されています。
しかし、報告・指導の権限を持つ都道府県労働局の対応が追い付かず、なかなか指導が行き届かなかったという問題点がありました。
これを受け、各地に点在する労働基準監督署に事実確認や聞き取り調査を行なってもらうことになりました。
あくまでも助言・指導の権限が都道府県労働局にあることには変わりありませんが、今後は労働局と労働基準監督署が連携をしながら同一労働同一賃金のルールを徹底していくことになったのです。
より多くの企業の調査に赴くことができるように監督官の人数を増員させたことからも、同一労働同一賃金のルール徹底に対する国の本気度が伺えます。
労働基準監督官は、定期的に企業を訪問しています。
その際に、今後は同一労働同一賃金に関する「チェックシート」を配布し、回答を得ていきます。
そのチェックシートの内容をもとに労働局は違反の疑いのある企業をピックアップします。
該当する企業へ報告を求めた上で、違反が認められた場合は指導・助言の段階へと入ります。
なお、違反とは認められないものの改善が要求される状況の企業に対しては、民間委託の事業となる「働き方改革推進支援センター」への相談を薦めるケースもあります。
働き方改革推進支援センターとは、同一労働同一賃金などパートタイム・有期雇用労働者の待遇改善に向けた相談窓口であり、企業を個別に訪問してコンサルティングを実施したり、対応に関するセミナーを薦めたりしてくれます。
労働局と労基署が連携することで、これまで以上に同一労働同一賃金に関する調査や指導が入る可能性がある点についてお分かりいただけたかと思います。
雇用形態に応じた待遇差が認められる可能性がある企業は、早急に対応をご検討ください。
制度の詳しい内容について疑問がある場合は、ぜひ一度、社労士法人・行政書士法人アーチスまでご連絡ください。
私たちアーチスは、神奈川県で労働社会保険諸法令に基づく相談・労務管理・給付申請を行っている社労士法人・行政書士法人です。
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顧問契約だけでなく、各種単発(スポット)での依頼も多数承っております。
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プロフィール
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