このようなご質問をいただきました。
「年俸制を導入すると残業代を払わなくてもいいと聞いたので年俸制にしたいです。年俸制を導入する方法を教えて欲しいです」
ですがこれは間違いです。注意をしないと、後々大変なことになってしまいます。
今回は「年俸制」と「残業代」に関して労務の専門であるアーチスが詳しくご説明いたします。
この記事の目次
年俸制にすると、残業しても、休日出勤しても、深夜に働いても、それ以上給料を支払う必要がないと思われている方が意外と多くいらっしゃいますが、そんなことはないんです。
以下に解説します。
まずは年俸制について確認しておきましょう。
シンプルに言うと年俸制とは1年ごとに給与総額を合意・更改していく給与の決定方法です。
年俸制と月給制の違いは、給与額の決定が年単位か、月単位かという点で、そのほかに大きな違いはありません。そのため、原則として、法定労働時間を超えて働いた分に関しては残業代を支払わなければなりません。
仮に月給30万の人と年俸360万の人がいた場合、月単位にすれば給与は同じです。
年俸制は個人の成果に応じて年間の給与総額を決定する賃金制度であり、実際の労働時間とは関係ないと思われがちです。しかし、労働基準法第24条では、「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と定められています。そのため年俸制であっても、給与総額を分割した額が月ごとに支払われます。
また、年俸制であっても法定労働時間である「週40時間、1日8時間」を超えて働いた分に対しては、残業代を支払わなければなりません。
例: 年俸500万とした場合
500万÷12か月=41万6666円
その月に残業時間が20時間あれば、41万6666円+残業20時間分の割増賃金の支払いが必要となります。
つまり、その月で働いた残業、休日、深夜分を
・月給制の方には支払わなければならない
・年俸制の方には支払わなくてもよい
ということにはなりません。
年俸制の勘違いを引き起こす原因の一つに、「管理監督者」という考え方があります。
労働基準法41条2項に管理監督者についての記載があります。
この管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあり、労働基準法で決められた「労働時間・休憩・休日の制限を受けない」者になります。つまり、残業代の支払なし、休憩なくてもいい、休日出勤しても休出手当の支払なしということになります。
よくある勘違いが、年俸=管理監督者です。しかしこれはイコールではありません。
よくある勘違いの例としてはこのようなものがあります。
・年俸制であれば、残業代等を払わなくてもいい→×
・年俸制であれば、管理監督者になるので、残業代等を払わなくてもいい→×
・管理監督者は、年俸でなければならない→×
管理監督者と年俸制は別物です。
管理監督者に該当するには、細かい条件が必要です。詳細はまた別のコラムで紹介させて頂きますね。
例外もあります。
それは固定残業代として一定時間分の残業代が年俸額に含まれており、その区分が明確に分かれている場合です。
それのケースについては残業代が別途支給にならないこともあります。
ただしその場合でも、規定の残業時間を超える分については別途残業代の支払いが必要です。さらに、年俸額に賞与が含まれる場合は残業代の計算根拠に賞与を含めなければなりません。
年俸制を導入する際は制度をしっかり理解しておきましょう。
年俸500万、想定残業時間20時間、所定労働時間160時間とすると
年俸500万÷12か月 = 月割換算で41万6,666円となります。
この41万6,666円の内訳を基本給36万/固定残業手当5万6666円と設定します。
■ケースA:実際の残業が20時間だった場合
36万÷160H×1.25増×想定残業20時間 = 5万6,250円であり、5万6,666円を下回るのでOK
この方の明細は、基本給36万円+固定残業手当5万6666円(固定残業20時間分)となります。
■ケースB:実際の残業が30時間だった場合
36万÷160H×1.25増×残業30時間=8万4375円なので、
【実際の残業】8万4375円 – 【想定残業】5万6,666円 = 2万7,709円の残業を支払う必要があります。
この方の明細は、基本給36万円+固定残業5万6,666円+残業代2万7,709円 となります。
年俸制と言っても残業代を払わなくても良いわけではないこと、想定残業が含まれる場合の実際の計算方法についてご理解いただけましたでしょうか?
経営者様や給与ご担当者様の勘違いから、残業代の未払いなど大きなトラブルに発展する恐れもあるので、ご不安な場合は私たちアーチスにご相談ください。
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社会保険労務士法人・行政書士法人
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