勤務態度や業務遂行に問題がある社員に対して、すぐに解雇できるケースは多くありません。
そのため実務では「退職勧奨」による合意退職を目指すことが一般的です。
ただし、やり方を間違えると退職強要と判断されるリスクもあるため、慎重な対応が必要です。
この記事のポイント:
・問題社員だからといって、すぐに解雇できるとは限らない
・実務では退職勧奨による合意退職を目指すケースが多い
・退職勧奨は進め方を誤ると退職強要になるリスクがある
・日頃の指導記録や証拠の積み重ねが重要になる
近年、「問題社員への対応に困っている」というご相談をいただく機会が増えています。
例えば、
・勤務時間中に私用スマートフォンばかり見ている
・何度指導しても改善しない
・周囲との協調性に欠ける
・営業成績や業務品質が著しく低い
・周囲の社員のモチベーションに悪影響を与えている
といったケースです。
経営者としては、「もう辞めてもらいたい」と思う状況であっても、法律上はすぐに解雇できるとは限りません。
実際には、十分な指導や改善機会を与えないまま解雇を行うと、不当解雇として争われるリスクがあります。
そのため実務では、まず退職勧奨による合意退職を目指すケースが少なくありません。
今回は、退職勧奨の基本的な考え方と、企業が注意すべきポイントについて解説します。
この記事の目次
退職勧奨とは、会社が従業員に対して退職を提案し、本人の自由な意思による退職を促す手続きです。
一方、解雇は会社が一方的に労働契約を終了させる行為です。
この違いは非常に大きく、法的な扱いも全く異なります。
実際のご相談でも、
「仕事をさぼっているので解雇したい」
「勤務態度が悪いので辞めさせたい」
というご相談をいただくことがありますが、話を詳しく伺うと、解雇できるだけの証拠や指導記録が十分ではないケースも少なくありません。
そのため、まずは退職勧奨による合意解決を検討することが現実的な選択肢となります。
解雇が無効と判断された場合、会社は従業員の復職を受け入れなければならないだけでなく、解雇期間中の賃金を支払わなければならない可能性があります。
退職勧奨による合意退職であれば、このようなリスクを回避しやすくなります。
退職勧奨は話し合いによる解決です。
そのため、
・退職日
・有給休暇の消化
・引継ぎ期間
・解決金や上乗せ退職金
などを柔軟に調整できる場合があります。
強引な解雇は、周囲の社員に不安を与えることがあります。
一方で、双方が納得した形で退職に至れば、社内への影響も比較的抑えやすくなります。
問題社員対応のご相談では、「何度注意しても改善しない」という段階でご連絡をいただくことが少なくありません。
しかし詳しく確認すると、
・口頭注意しかしていない
・指導記録が残っていない
・求める基準を明確に伝えていない
というケースも多く見受けられます。
会社としては十分指導したつもりでも、後から客観的に証明できなければ、法的には不十分と判断される可能性があります。
そのため、退職勧奨の前段階として、指導記録や証拠を積み重ねていくことが非常に重要です。
退職勧奨は、あくまでも本人の自由な意思による判断が前提です。
そのため、面談の進め方を誤ると、「退職勧奨」ではなく「退職強要」と判断されるリスクがあります。
実際のご相談でも、「どのような形で面談すればよいですか?」というご質問をいただくことがあります。
一般的には、
・会社側は2名程度で対応する(1人が話し、1人が記録する)
・感情的にならず事実に基づいて話す
・長時間の面談を避ける(30分〜1時間程度)
といった点が重要です。
特に問題社員対応では、会社側も感情的になりやすい場面があります。
しかし、感情論ではなく、これまでの指導経緯や客観的事実を整理したうえで冷静に話し合うことが重要です。
退職勧奨はあくまで会社からの提案であり、本人には応じるかどうかを判断する自由があります。
そのため、従業員が「退職しない」と明確に拒否の意思を示した後も、
何度も面談を繰り返したり、退職届の提出を執拗に求めたり
執拗に退職勧奨を続けることは、労働者の自由な意思決定を妨げるものとして違法と判断されやすいので気をつけてください。
実務では、会社として退職を提案すること自体は認められていますが、相手の意思決定の自由を奪うような状況は避けなければなりません。
退職勧奨の場面では、会社側が不用意な発言をしてしまうケースもあります。
例えば、
・辞めなければ解雇する
・この会社にはもう居場所がない
・退職しないなら評価を下げる
といった発言です。
実際に解雇が有効になるだけの根拠が十分にあるケースであれば別ですが、そうでない段階でこれらの発言を行うと、脅しや圧力と受け取られる可能性があります。
感情的な表現や威圧的な言葉は、後々のトラブルにつながりやすいため注意が必要です。
退職勧奨を拒否されたことに対する報復として、業務上の必要性がない部署(いわゆる追い出し部屋など)へ不利益な配置転換を行うことは、権利の濫用として無効となります。
例:
・仕事を与えない
・必要以上に隔離する
・嫌がらせ目的の配置転換を行う
・周囲から孤立させる
実際に問題になるのは退職勧奨そのものよりも、その後の会社の対応であるケースも少なくありません。
退職勧奨を断られた場合でも、会社はこれまで通り適切な労務管理を継続する必要があります。
仕事をサボる社員にいきなり「辞めてくれ」と伝えても、「会社は大した対応はできないだろう」と応じないことがほとんどです。
確実に合意へ導くには、以下のステップを踏むことが重要です。。
まず重要なのは、会社が感じている問題を客観的な事実として整理することです。
例えば、
・勤怠記録
・PCログ
・業務実績
・指導履歴
などを確認し、どのような問題が発生しているのかを整理します。
その上で、会社が当該社員に求める具体的な業務内容や達成すべき水準を本人に明確に伝えます。
問題社員対応では、「指導したつもり」と「指導した事実」は別の問題です。
そのため、
・面談記録
・指導記録
・業務日報
などを活用しながら、改善に向けた働きかけを継続していきます。
特に在宅勤務や外回りが多い職種では、業務日報の活用が有効な場合もあります。
後になって振り返った際に、「会社として改善機会を与えていた」ことを説明できる状態にしておくことが大切です。
度重なる指導や、指示違反に対する懲戒処分の検討を通じて、本人に「この会社では自分のさぼり癖や働き方は通用しない」「会社はこれまでと違って本気だ」と自覚させ、自己認識のゆがみを修正させます。
上記の手順を踏み、本人が自身の置かれた厳しい状況を理解した段階(または懲戒処分の手続きの過程)で、退職勧奨を行います。
この段階であれば本人にも退職を受け入れる土壌ができており、条件を提示することで、スムーズに合意に至る可能性が高まります。
この段階では、
・これまでの指導経緯
・本人の改善状況
・業務への影響
などが整理されているため、会社としても客観的な説明がしやすくなります。
また、ケースによっては、
・退職日の調整
・有給休暇の消化
・解決金の支給
などの条件を含めて話し合いが行われることもあります。
退職勧奨は突然行うものではなく、これまでの経緯や双方の状況を踏まえながら進めることが重要です。
問題社員への対応は、企業にとって非常に悩ましい問題です。
しかし、「辞めてもらいたい」という思いだけで対応を進めてしまうと、退職強要や不当解雇といった別の問題に発展する可能性があります。
重要なのは、日頃の指導や記録を積み重ねながら、適切な手順で対応することです。
アーチスでは、問題社員対応や退職勧奨の進め方、指導記録の整備、就業規則の見直しなどのご相談にも対応しています。
「このケースは退職勧奨できるのか」
「どこまで指導すればよいのか」
といったお悩みがありましたら、一度ご相談ください。
プロフィール

神奈川県平塚市
Crux社会保険労務士法人・行政書士法人
アーチス
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