第1弾の記事では、同一労働同一賃金の基礎となる内容について
第2弾の記事では、同一労働同一賃金の指導強化について解説をしてきました。
今回は第3弾です。
同一労働同一賃金のうち、特に注目の「賃金面」に関する待遇について、企業が覚えておくべきポイントや対応内容についてご説明していきます。
この記事の目次
2018年に成立した「働き方改革関連法」により、各企業へは「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」が求められることになりました。
成立当初は大企業向けの内容とされていましたが、2021年に中小企業も範囲に含まれたため、現在はすべての規模の企業が取り組まなければならないものとされています。
具体的な内容については、主に以下の3つとされています。
①不合理な待遇差をなくすための規定を整備すること
②雇用している労働者に対する「待遇」に関する説明義務
③行政による事業主への助言・指導について、裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定を整備すること
これに伴い、厚生労働省は、「同一労働同一賃金」に関するガイドラインを策定しています。
このガイドラインでは、同じ会社に所属する正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間で問題視されている「不合理な待遇差」の内容について、具体例を交えて記載しています。
参考:厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html
しかしながら、このガイドラインは非常に項目が多く、表現も複雑です。
次の項目では、
・この不合理な待遇差を生じさせないような対応策
・待遇差に関する説明
・行政の指導や行政ADRの規定
などについて、特に賃金の側面から私たちアーチスが噛み砕いてご紹介していきます。
異なる雇用形態の社員が入り混じって仕事をする場合、最も「不公平ではないか」と考える要素は、やはり「賃金」のことでしょう。
ただ、一言で賃金といっても、その内訳は会社の規模や業種、状況に応じて様々です。
ここでは、専門的な見地から代表的な項目を解説します。
基本給は、すべての給与の基本となる部分です。
基本給の設定基準には、社員の能力や経験に基づいて算出される部分、会社の業績や成果報酬として支払われる部分、働いた年数に応じて支払われる部分など、さまざまな趣旨で支払われていることが予想されます。
正社員とパートタイム・有期雇用労働者の間に生じる不合理な待遇をなくすためには、その趣旨を踏まえ、実際にこなしている仕事の状況を加味した上で金額を決定する必要があります。
例えば、実態の内容に違いがなければ同一の待遇を、実態が異なるのであればその違いに沿った形の待遇を確保し、支給をするということです。
また、昇給の額について注意しなければならないのは、社員の勤続年数に比例して向上するスキルの度合いを加味して算出する場合です。
雇用形態にかかわらず同じように能力が向上している場合は同等の、異なるのであればその違いに応じた昇給をする必要があります。
賞与についても、雇用形態ではなく貢献の度合いに応じて支給をしなければなりません。
会社の業績への貢献度合いに応じて支給をする部分は、雇用形態に関わらず同じ貢献度合いであれば同じ待遇を、異なるのであればその違いに沿った形で待遇をする必要があります。
手当については、その内容によって待遇が変わる場合があるので気をつけてください。
まず、役職手当については、役職の内容に応じて支給する部分は、雇用形態に関わらず、同じ内容や責任度合いをもつ場合には同じ待遇を、異なるのであればその違いに沿った形での待遇を加味して支給をしなければなりません。
また、特殊作業手当、特殊勤務手当、精皆勤手当、通勤手当、出張旅費、食事手当、単身赴任手当、地域手当などについては、雇用形態に関わらず同じ基準で支給をしなければなりません。
さらに、時間外手当や休日手当、深夜手当の割増率も同一にする必要があります。
なお、住居手当については別となるため注意しましょう。
正社員は、非正規雇用者と比較すると転勤や出向などで異動をする可能性が高く、住宅にまつわる費用負担がよりかかるケースがあることを理由に、雇用形態に応じた待遇差は不合理ではないとされています。
福利厚生施設の利用や年末年始・夏季・冬季休暇、健康診断にまつわる勤務免除や有給保障などについては、雇用形態に関わらず付与するものとされています。
ただし、私的事情による欠勤中の賃金支払いなどについては、正社員と同様に短期雇用者やアルバイト社員などに適用することは妥当ではないとされ、雇用形態に応じた待遇差が認められています。
また、病気休暇に関しては、有期雇用者に対しても雇用契約終了までの期間を踏まえた上、同一の待遇を確保する必要があります。
さらに一方、職務に必要であると判断された教育訓練に関しては、雇用形態にかかわらず職務の内容に応じて実施をしなければなりません。
「同一労働同一賃金」問題に対応するために各企業が行うべき取り組み内容としては、まずは社員の雇用形態を見直すことです。
その上で、同一労働同一賃金に関する配慮をしなければならない対象社員を洗い出しましょう。
対象社員がいる場合は、その社員の待遇内容を一つずつ見直していき、待遇差がみられる場合はその理由が妥当な内容かどうかを検討します。
また、待遇差に関する理由については、社員に対してきちんと説明をすることができるよう、項目別に待遇差が生じる理由について記載した「説明書」を用いる方法が効果的です。
「不合理ではない」という説明ができない待遇差が見つかった場合は、早急に改善をしなければなりません。
改善策については、社員や専門家の意見を取り入れながら規則化していくと良いでしょう。
同一労働同一賃金を適用させていくためには、賃金や福利厚生制度、教育制度などについて、該当する社員について一つずつチェックすることが非常に重要です。
そしてそれには専門的な知識が必要なため、なかなか一筋縄ではいかないのが現状です。
「何から手を付けてよいかわからない」
「この手当はどうすれば?」
「自社について専門家の意見を聞いてみたい」
「どこに相談したら良いかわからない」
といった疑問やご不安がある場合は、ぜひ一度、社労士法人・行政書士法人アーチスまでお問い合わせください。
私たちアーチスは、神奈川で労働基準法・雇用保険法・健康保険法・厚生年金法などの労働社会保険諸法令に基づく相談・労務管理・給付申請を行っている社労士法人・行政書士法人です。
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