ワーク・ライフ・バランス、一億総活躍社会、働き方改革など、国ではすべての人が生き生きと働くことができるような社会づくりのための施策を次々と打ち出しています。
障害者雇用もその一つで、障害の有無にかかわらず均等に雇用機会を得られるような社会を理想とされています。
今回は、障害者雇用に関する法改正の内容にスポットを当て、経緯について順に見ていこうと思います。
この記事の目次
障害者雇用促進法は、正式名を「障害者の雇用の促進等に関する法律」といい、その名の通り障害者が安定して雇用されるようになるためのルールが定められた法律です。
具体的な内容としては、まずは会社が障害者を雇用しなければならないという義務、つまり前コラムで述べたような「法定雇用率」に関する内容について、そして障害者を実際に雇用する際に実施する職業指導や職業訓練、または職業紹介に関する内容などが詳細にわたり定められています。
この法律で雇用安定の対象となる障害者は、以下に該当する者になります。
①身体障害者
身体障害者障害程度等級表1~6級に該当する者、または7級の障害に2つ以上重複する者で、身体障害者手帳を保有している者
②知的障害者
療養手帳を保有している者で、知的障害者であることが判定された書類を持つ者
③精神障害者
精神障害者や発達障害者で、比較的症状が安定しており就労が可能とされる者で、精神障害者保健福祉手帳を保有している者
障害者雇用促進法は、1960年に障害者雇用促進法の前身となる法律「身体障害者雇用促進法」で定められたのが最初とされています。
身体障害者雇用促進法が制定された当時は、第二次世界大戦の影響により障害を負った国民のため、優先的に雇用促進を行うことが急務とされていました。ただし、法律制定時は、障害者の雇用は義務ではなく「努力義務」でした。
その後、1976年の改正により、努力義務が義務化される運びとなりました。この頃は世界中で障害者の権利を守るための活動が盛んで「国連・障害者の十年」が1983年にスタートしたという流れもあり、1987年に新たに「障害者雇用促進法」に名称が変更されることになりました。
ここで、障害者の範囲がこれまでの身体障害者に加え、知的障害者も対象になった点にも注目です。
そこから2006年の改正により精神障害者も新たに含まれ、より雇用安定の対象者が拡大されることになりました。
障害者雇用率は、先ほど説明をした「障害者雇用促進法」で定められた制度における、会社が障害者を雇うことが義務づけられている目安となる数値のことです。
(なお、障害者雇用率制度については、前コラムを参考にしてください。)
障害者雇用率は、改正を重ねるごとに上昇しています。
まず、1960年の身体障害者雇用促進法の制定直後は一般企業における現場勤務(工場など)の場合は1.1%、事務所勤務の場合は1.3%が「努力義務」として定められました。
その後、1976年の法改正の際に、1.5%へ引き上げられ、努力義務から義務化へと変更になりました。
更に、障害者雇用促進法へと法律名称が変わった後となる1988年には1.6%、1997年に1.8%、次いで2013年に2.0%に引き上げられました。
そして2023年3月現在は一般企業の場合は2.3%、国・地方公共団体の場合は2.6%、特殊法人等の場合は2.6%、都道府県における教育委員会の場合は2.5%で、法改正により更なる雇用率引き上げが予定されています。
国では、障害者雇用を促進するための会社を支援するための対策を次々に打ち出しています。その対策の一つとして、令和6年4月以降は、以下の助成制度が新設される予定です。
障害者雇用に関する相談を受けたり、援助を行ったりする事業者から、障害者の雇入れや継続雇用を行う際に必要となる雇用管理にまつわる相談を原則として無料で受けることができる制度です。
主に次に述べる助成金制度の内容が拡充されます。
障害者介助等助成金
障害者の雇用管理を行う専門職・能力開発担当者の配置、介助者等の能力開発にかかる経費助成制度が追加
職場適応援助者助成金
ジョブコーチ助成金に関して、助成単価や1日当たりの支給上限額、事業主の利用回数の改善
上記の内容以外にも、さまざまな内容改善が予定されていますので、今後の情報にも注目です。
障害者雇用率は、法律によって定められた義務のため、雇用率を遵守しない企業は雇用不足の障害者数1人あたり月額50,000円の障害者雇用納付金を納めなければならない点に注意が必要です。
障害者雇用についてご不明な点がある場合、また個別のご相談については、いつでも労務の専門家集団であるアーチスにご連絡ください。
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神奈川県平塚市
社会保険労務士法人・行政書士法人
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