企業が本当に問われる判断ポイントと、実務で起きやすい落とし穴について、社労士が解説します。
この記事の目次
安全配慮義務とは、会社が従業員の生命・身体・心身の健康を守るために負う法的義務です。
ただし実務で問題になるのは、「義務があるか」ではなく、
・どの時点で
・どこまで
・どのように介入すべきだったのか
という判断の線引きです。
この判断を誤ると、「やっていたつもり」でも 安全配慮義務違反と評価されることがあります。
本記事では、法律の基本を押さえたうえで、実務で争点になりやすいポイントに絞って解説します。
安全配慮義務は、労働契約法5条に基づく、使用者の義務です。
使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をしなければならない。
この義務は、「労働安全衛生法の遵守」「健康診断の実施」だけで自動的に果たしたことにはなりません。
裁判では一貫して、「具体的状況に照らして、結果を回避する行動を取れたか」が問われます。
安全配慮義務違反の成否は、次の2点で判断されます。
・そのリスクを 予見できたか
・予見できたなら 介入できたか
ここが、ネット記事ではほとんど触れられていないポイントです。
予見できたと判断されやすい例としては
・長時間労働が常態化していた
・健康診断で要再検査・要治療の所見が出ていた
・本人や周囲から体調不良の申告があった
・業務内容が明らかに高ストレスだった
などです。
「本人が大丈夫と言っていた」ことは、免責になりません。
ここが、企業側が最も判断を誤りやすいポイントです。
実務上、問題になるのは次のような場面です。
・忙しい時期だから様子を見る
・本人が責任感を持って続けている
・明確な診断書はまだ出ていない
しかし裁判では、明確な結果が出る前でも、兆候があれば業務軽減等の措置を検討すべきと判断されるケースが少なくありません。
つまり、「何も起きていない段階」での判断が、後から問われます。
精神障害に関する労災認定が増加している現在、メンタルヘルス対応は安全配慮義務の中心的テーマ です。
特に重要なのは、
・長時間労働の把握
・管理職による変化の察知
・相談体制の整備
です。
メンタルヘルス対策を全く行っていない場合、「それ自体が義務違反」と評価されるリスクがあります。
働き方が変わっても、安全配慮義務は消えません。
・テレワーク中の長時間労働
・自宅環境による健康悪化
・高年齢労働者の転倒・体力低下
についても、「把握できなかった」では済まされないと判断される可能性があります。
「法律を守っていれば大丈夫」
「本人の自己責任」
「問題が起きてから対応すればよい」
これらは、すべてトラブル時に否定されやすい考え方です。
安全配慮義務は、「事故を起こさないための義務」ではなく
「事故が起きないように先に介入する義務」だと理解する必要があります。
安全配慮義務で本当に問われるのは、
・何を知っていたか
・その時、何ができたか
・なぜ、その判断をしたのか
という「判断プロセス」です。
ここを整理せずに運用していると、後から説明できないリスクを抱えることになります。
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神奈川県平塚市
Crux社会保険労務士法人・行政書士法人
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