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    【そのケガ、労災かも?】社内行事でのトラブル対応ガイド

    労災

    質問:
    当社の従業員が社内行事中に負傷しました。労災として認められる可能性はありますか?
    また、会社としてどのような対応が必要でしょうか?

     
    回答:
    従業員が会社の行事中に負傷した場合、その状況によっては労働災害(労災)として認められる可能性があります。
    労災と認められるかどうかの判断には、特定の基準に基づいた適切な手続きと、その後の会社の責任に関する理解が必要です。
     
    本記事では、社内行事中の負傷における労災の考え方と注意点について社会保険労務士が詳しく解説していきます。

    労働災害(労災)とは?

    労働災害(労災)とは、働く人が、仕事中や通勤中にケガをしたり、病気になったり、残念ながら亡くなったりすることを指します。
    労災と認められると、国から保険給付(治療費や休業補償など)を受けることが可能となります。

    「労災となるかどうか」はどう判断されるの?

    労災に該当するかどうかは、主に次の2つの基準で判断されます。
     
    1.業務遂行性
    ケガをしたときに、従業員が会社の支配下にあったかどうかという観点です。
    これは、会社の建物内で仕事をしている時間だけでなく、休憩中や出張の移動中なども対象になることがあります。
     
    2.業務起因性
    ケガや病気が、会社の仕事や環境によって引き起こされたかどうかという点です。
    つまり、「そのケガは仕事に関係していたか」が問われます。
     
    この「業務遂行性」と「業務起因性」の両方がそろって初めて、そのケガや病気は「業務災害」として労災に認定される、というのが基本的な考え方です。

     

    社内行事でのケガは労災になる?

    社員旅行や運動会、懇親会などの社内行事中に従業員がケガをした場合でも、必ずしも労災として認められるとは限りません。
    ポイントとなるのは、その行事が「業務遂行性」と「業務起因性」の両方の基準を満たしているかどうかです。
     
    多くの社内行事は、休日や勤務時間外に実施され、かつ任意参加で行われることが一般的です。
    このような場合、参加が強制されておらず、不参加による不利益もないため、「会社の支配下にあった」とは判断されにくく、業務遂行性が認められにくい傾向があります。
     
    実際に、任意参加の忘年会に出席した従業員が事故に遭ったケースでは、労災と認められなかった裁判例もあります。
     

    例外的に業務遂行性が認められることも

    ただし、次のようなケースでは、例外的に業務遂行性が認められる可能性が高くなります。
     
    参加が実質的に強制されている場合
    「全員参加」が強く求められ、参加しないと欠勤扱いになるようなケースでは、会社の業務命令と同等とみなされるため、業務遂行性が認められやすくなります。
     
    行事の幹事を任された従業員の場合
    任意参加の行事であっても、会社の指示により準備や運営を担当している幹事役の社員については、その活動が実質的な業務命令と見なされ、業務遂行性が認められる可能性が高くなります。
     
    研修など業務の一環と評価できる場合
    たとえば、会社の費用で実施される研修旅行や歓送迎会、歩行訓練などが、業務の一環と判断されるような場合は、実施時間が勤務時間外であっても、業務遂行性が認められることがあります。
     
     

    業務起因性はどうか

    次に「業務起因性」についてですが、たとえ業務遂行性が認められたとしても、ケガや事故の原因が業務に直接関係していない場合は、労災とは認められません。
     
    個人的なトラブルによるケガ
    社内イベント中に従業員同士が私的な感情のもつれから喧嘩になりケガをした場合などは、業務とは無関係とされ、業務起因性が否定される可能性があります。
     
    私的な遊びによる負傷
    休憩中にキャッチボールなどの私的な遊びをしていてケガをした場合、会社の設備に問題がない限り、業務起因性は認められにくいとされます。
     
    偶発的な事故によるケガ
    たとえば、社員旅行の夕食後、同僚と部屋で仕事の話をしていたとき、花瓶を倒して割れた破片で手を切ってしまった、というようなケースでは、原因が業務と無関係な個人的行動や不注意と考えられ、業務起因性が否定される可能性が高くなります。
     
    業務に関連するトラブルによるケガ
    一方で、上司と部下の口論が原因でトラブルに発展した場合などは、業務との関連が認められ、業務起因性が成立する可能性もあります。
     
     

    ケーススタディ

    Case1【BBQ】
    会社が「任意参加」で休日に開催したバーベキュー大会で、他の社員とふざけていて転び、足を捻挫した。

    → 休日の任意参加イベントであるため業務遂行性が認められにくく、また、ふざけていたことが業務と関係ない個人的行動とみなされれば業務起因性も問題となるため、労災となる可能性は低いと考えられます。
     
     

    Case2【体力測定】
    会社の就業時間中に「全員参加」で実施された体力測定中に転倒し骨折した。

    → 就業時間中に会社から「全員参加」を指示されているため業務遂行性が認められやすく、体力測定中の転倒による骨折はその活動内容と関連したケガとして業務起因性も認められやすいため、労災となる可能性が高いと考えられます。
     
     

    Case3【社員旅行中の部屋】
    社員旅行の夕食後、部屋で偶発的に花瓶を倒し手を切った。

    → 社員旅行が任意参加であれば業務遂行性が認められにくいのが原則であり、さらにケガの原因が業務と直接関係のない個人的な行動や不注意によるものであるため、業務起因性が認められない可能性が高く、労災となる可能性は低いと考えられます。
     
     

    Case4【新人研修歩行訓練】
    新入社員研修の一環として課された歩行訓練中に足に後遺症が残った。

    → 研修は業務命令として行われているため業務遂行性が認められ、訓練による足への負荷とケガの間に因果関係(業務起因性)も認められるため、労災となる可能性が高いと考えられます。
    特に、無理なプログラムだったり、痛みがあるのに中断を認めなかったりした場合は、会社の「安全配慮義務違反」が問われる可能性も高くなります。
     
     

    労災と認定された会社の責任は?

    従業員のケガが労災と認められ、国から労災保険の給付金が出たとしても、それだけで会社の責任が完全に終わるわけではありません。
     
    会社は、労災保険から給付された金額については、労働者に対する民事上の損害賠償責任を免れるとされています。しかし、労災保険の給付だけではカバーしきれない損害については、引き続き会社が賠償責任を負う可能性があります。
    例えば、労災保険では補償されない慰謝料や、将来にわたる逸失利益の一部などがこれに該当します。
     
    特に、会社の安全配慮義務(労働者が安全に働けるように配慮する会社の義務)違反が認められるようなケースでは、会社は労災保険給付を超える損害について、損害賠償責任を負うことになります。
    前述のケース4のように、研修内容が無理のあるものであったり、従業員の訴えを聞き入れなかったりした場合などは、安全配慮義務違反と判断され、会社に損害賠償責任が認められることがあります。
     

    覚えておきたい5つのポイント

    ①社内行事でのケガが労災になるかどうかは、その行事の性質や参加の強制度、ケガの原因などが複雑に絡み合って判断される。
     
    ②一見楽しそうなイベントであっても、会社の指示や業務と関連が深い場合は労災となる可能性がある。
     
    ③逆に、任意参加のイベントでは労災にならない可能性が高い。
     
    ④たとえ労災保険から給付金が出たとしても、それだけで会社の責任が完全に消滅するわけではないという点を理解しておくことが重要。
     
    ⑤判断が難しいケースや、労災保険給付を超える損害賠償が問題となる可能性がある場合は、会社の労務担当者や専門家(弁護士や社会保険労務士など)に相談することが大切。
     
     

    トラブルが起きる前に、専門家と一緒にリスク管理を

    社内行事中の従業員の負傷が労働災害(労災)として認められるかどうかは、「業務遂行性」と「業務起因性」という2つの基準を満たしているかにかかっています。
    一般的に、任意参加の行事では労災と認められにくい傾向にありますが、実質的に参加が強制されていたり、幹事役としての業務に該当していたり、研修など業務の延長と見なせる内容であれば、例外的に労災が認定される可能性も十分にあります。
     
    さらに、たとえ労災として認定され労災保険から給付があった場合でも、それですべての責任が解消されるわけではありません。会社に「安全配慮義務違反」があったと判断されれば、労災保険で補いきれない部分について、企業が追加で損害賠償責任を負うことにもなりかねません。
     
    「うちは任意参加だし大丈夫」「イベントだし労災は関係ない」と思い込んでいると、思わぬリスクに直面することもあります。万が一に備え、あらかじめルールや運用を見直しておくことが、会社と従業員の双方を守る第一歩です。
     
    アーチスでは、労災の判断に迷うケースへのアドバイスはもちろん、社内制度の見直しやリスク予防の観点からも、実務に即した支援を行っています。
    「不安な点がある」「念のため確認したい」――――そんな小さなきっかけでも構いません。
    どうぞお気軽にご相談ください。
     
     
     



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